6/04/2015

AMトランスミッターが認知されない理由

世の中には、免許不要で使える物理媒体での直接接続が不要な所謂、ワイヤーレス(コードレス)な物が数多く存在します。誤解されないように言いますが、スマホなどの移動体通信機器に関して、私達は特に免許を取得する為の勉強をしたりする必要がないのは、それらを提供する事業者が一括で、「事業者所有の機器」として認可を受けているからなのです。実際に移動体通信機器は、免許が必要です。免許を取得している事業者の機器を、私達一般人が使っているだけなので、当然ながら、それらを改造する事は、法律にも違反ですし、事業者との契約事項でも不正となります。とは言っても、デジタル媒体である昨今の移動体通信機器を物理的に改造すると言うのは、かなり難易度が高いもので、通信の暗号なども含めてほぼ不可能と言われてますが、ソフトウェアハックならぱ可能です。なのでもし、色んな部分でイリーガルになる事前提で改造する場合、それらに内蔵されているコントロールチップや、ラジオチップのソフトウェアを書き換えるアプローチをしてみて下さい。特にFPGAなどをゃっている人には、このハックはかなり面白いと思いますよ。例えばですが、800MHz帯の機器ならば、通信コードを無効化して、MCA(Multi Channel Access)機能を乗っ取る事で、同様の改造を施した移動体通信機器同士でウォーキートーキーいぇぁする事も可能です。或いは、MCAをいじくる事で、携帯電話妨害器を作ることも可能で、実はこっちのほうが簡単だったりします。MCA云々をいじらなくとも、800MHzバンド内を暴走発振させるだけで、周囲100m程度の携帯電話を使用不可にするくらいは可能でしょう。後はスペクトル拡散方式の、って言葉の通り、拡散中心で以下略。

さて、そんなアングラな話はさておき、「電波は国有財産である」の原則に基づき、一定以上のパワーな電波を出すには、認可、資格、免許と言ったライセンスが必要なのですが、一定以下ですと、これらが不要なのです。元々は、電子機器から出る不要輻射電波(液晶を搭載している機器からは確実に出てます)を管理する規定の延長上なのですが、この微弱電波規定に準拠した機器というのは、割と使えます。規定されているという違いはありますがWiFiなどもそうですね。そんな中、今回のトピックに一番近い話として挙げられるのは、

FMトランスミッター

これは皆さん馴染み深いと思います。Amazonで検索すると、この通り。これらは、一応は、認可も免許も不要な媒体です。多少は改造もOK。微弱電波の範囲をオーバーしている製品もありますけど、多少のオーバーは容認されてます。こちらでは、仮にこういうちょっと危ないかなーって物でも、あまり摘発される事は無いのです。FCCさんもそんなにヒマではない。ただ、真っ先に摘発されるのは、他の通信を妨害した場合。その中でも特に、警察無線や、そしてこちらは重罪ですが、航空無線、救急無線への妨害。法律云々ではなく、概ねこの「妨害行為」に至った場合の検挙率が凄まじいです。それ以外、例えば10W程度で、こじんまりと「今夜のハッピーミュージックでいぇぁ。みんな聞いてるかぃいぇぁ。今週のトップ10だぜいぇぁ」とかいう痛々しい事をやってても、監視対象にはなりますが、摘発という事には至らない傾向にあるのです。と言っても、10W程度では、放送エリアはせいぜい、10Km程度ですので、プリセットリスナー(予め周波数をメモリーしておき、その決まったチャンネルのみを切り替えて視聴するリスナー)が多い現在では、認知度は低いでしょうけどね。ただ、数ワット以上になりますと、それなりに不要輻射(スプリアス)の管理も重要になりますので、そういった知識がない場合には、危険な賭けになります。

では、本筋の

AMトランスミッター

こちらは、一応、工作キットなどではAMT3000やGizmoo, Ramsey, や、その他、真空管を使った電子工作入門キットなどが見られますが、直ぐに使用可能な市販製品は非常に少なく、と言っても一応は有りますよ。ただ、基本的には、お遊びレベルだと思いましょう。ある一つを除いて。

それは、Talkinghouse AM Transmitter(日本国での使用は違法ですが、この程度のオーバーならば大丈夫だとは思います)。


アンテナマッチング機構が特徴で、電動モーターにより、AMのバーアンテナのコイル位置を最適な位置に自動的に調整する機能です。価格としては、500$付近で販売されています。非常に拘った設計がされていますので、イベント会場などでも使用実績があります。

[だがしかし認知されない!]

需要がない、の一言に尽きます。そりゃあだって、普通に音楽をワイヤレスで聴きたければ、BluetoothでOKですし、しかもデジタル転送なので、転送間においてはロスレス。多少音質は落ちますが、FMトランスミッター。そんな中、10KHz程度までしか乗らない音質的にも最悪なAMトランスミッターなんぞ、流行る訳がありません。

しかも

FM放送帯88MHz~108MHz -- 波長は4m程度
AM放送帯530KHz~1700KHz -- 波長は300m

電波を効率よく発射するには、概ね、波長の1/4程度がベストだと言われてますので(どうしてそう言われているのかは他のサイトに丸投げ)、FM放送帯だと1mのアンテナ。

AM放送だと

75mのアンテナいぇぁヾ(✿❛◡❛ฺฺ)ノ


「このトランスミッターを使う場合は、地面から垂直に75mのアンテナを設置してくださーーい❤」

なかなか個人で75mのアンテナを立てれる人は居ないでしょう。100歩譲って、多少はマッチングは狂いますけど、1/8波長にしたところで、38mのアンテナ。もっとマッチングがカオスですが1/16波長でも18m。18mのアンテナを車に載せて走っている人を、私は見たことがありません。

こういう場合は、ローディングコイルという、所謂、短縮コイルってものを使い、短くてもマッチングの良いアンテナがHAMでは使われてますが、この手法は、あくまでマッチングを良くするだけで、本当にネイティブ1/4波長アンテナに匹敵させられるわけではありません。

色々とありますが、結局、この1/4波長から離れるにつれて、電波の輻射効率は悪くなります。個人で使用する場合に許容できるアンテナの長さは、せいぜい30cm程度。ほぼ9割以上の人は、仮にFMトランスミッターにアンテナ端子や、アンテナが付属してても、とりあえずそれを接続せずに、若しくは接続しても、ビローンって垂らした状態で動作確認し、そこから5割の人は、そのまま使うと思います。キッチリとアンテナを弛みなく張って使う人って、殆ど居ないと思います。一般ユーザーって、そういうもんです。そもそも、外部アンテナ自体、億劫に感じる人も居る位で、かつて携帯電話に外部に突き出せるタイプのアンテナが装着されていた時代にも、アンテナを伸ばして通話する人って、殆ど居なかった事が物語ります。

それなのに、75mのタワー、果ては30cmのビニール線すら張らない人が居る中、機器側としては、超小型のチップアンテナを内蔵するしかなくなったわけです。FM帯ならば分かりますが、波長が尋常ではない長さであるAM帯では、この内蔵型チップアンテナなどは使い物になりません。特に、送信出力で規定されているこちらの微弱電波機器ルールの中では、パワーを高くする事は出来ず、かといってアンテナでの工夫も不可能とあれば、もうAM帯での理想は崩壊します。勿論、音質の悪さもあって、このAM帯のワイヤレス媒体が、ほぼ認知されない理由の大半となっています。

バーアンテナという手段もあるにはあるのですが、結果的には、全体が短縮コイルにしかならない、って事情も介入しますのでね。

そして、近い将来、AMラジオは消滅します。FMラジオですら消滅の一途を辿ってますね。ノルウェーは2017年までに、国内のFMラジオを含めた全てのアナログラジオを廃止する、と公言しています。

アナログのAM/FMラジオは、何れは記憶の中へと、そして、かつてアナログだった事を「信じられない」と思う世代で埋め尽くされます。「アナログだなんて、あんな送れるデーター量が少なすぎる媒体で、よく音楽とかを送ってたよね。しかもステレオで」って時代が来ますね。