↓の写真は、AMトランスミッター小鉢(贈呈済み)の周波数切り替え回路基板。比較的切り替えが必要であろうとされる部分の回路に、接点式リレーを使用するのか、それとも半導体スイッチを使用するのかによって、耐久性が違ってきます。小鉢の設計時には、リレー式の切り替え回路を予定していたのですが、実はリレーと言う物は外部の熱によっても耐久年数が変わってきます。
ただ、小鉢に使用した回路は、実質的な信号を切り替える部分についてのみ半導体スイッチを使いました。ラッチング回路を組んで、プッシュスイッチにて切り替えをさせようと考えていたのですが、ユニットを収めるスペースの関係で、トグルスイッチからの信号で半導体接点を切り替える方式にしました。
ん?そんな事をするのだったら、トグルスイッチに信号を通して普通に切り替えれば良いのでは?
と思われるかもしれませんが、高周波ってほどではないにしても、1MHz以上を切り替える必要があるのと、更にいうと、10MHz付近の水晶を切り替える必要がある、って事から、流石にダイレクトに引き回す事になるのはダメって意味でも、プリント基板上の配線ルート上に、切り替え回路が必要だった、故に、リレー、又は半導体スイッチを使った、いわゆる遠隔制御が必要になったわけです。
トグルスイッチの耐久年数と、リレーそのものの耐久年数を考えると、実質、トグルスイッチのほうに軍配が上がる、って事なので、このような構成にしました。
人にお作りする物には耐久性の高い物、耐久年数が長い物を選択する率が高く、必然的に高価なパーツを使う事になるのですが、私の場合は、この耐久についてのみに注力して構成します。
半導体スイッチ自体は、息の長いデバイスです。今後も無くなる事はまず無いでしょう。モノが無くなったとしても、同様に使える媒体が出てくる事と思いますが、比較的息の長い半導体スイッチには
CMOSの
4051, 4052, 4053、4066高速版だと74HCシリーズにもあります。
制御端子に電圧を加える、加えないによって、内臓されている半導体スイッチの接点が切り替わる媒体です。接点が物理的機構ではないので、寿命は半永久的。良い面に対して、マイナス面もあります。スイッチが接触して通電状態になった場合、若干ながら抵抗値を持っている、という点。CMOS4000シリーズならば100Ω程度、74HCシリーズならば、10Ω程度。今回小鉢に使用したのは、4000シリーズのほうでした。実は、この100Ω程度の抵抗値は、一石二鳥だったのです。
水晶と発信回路の間には元々、数百Ωの抵抗を入れて安定化を計る回路だったので、この4000シリーズの半導体スイッチを使う事で、必然的にそれが抵抗としても作用したわけです。
どのくらい古いかってのもこの資料の年代からして垣間見る事が出来ます。この資料は、東芝半導体関係の1975年の書籍からの引用です。そして、これらのデバイスは現在も、様々なメーカーから製造を継続されています。4053について見て見ると、ABCの端子をVDDに繋ぐかGNDに繋ぐか、前者は1(high)、後者が0(low)となり、これをマイコンなどからの制御で内部に設けられた半導体スイッチが作動します。スイッチと言っても目に見える金属片スイッチが入っているわけではなく、実際にはFETの組み合わせです。そのFETの内部抵抗が、そのままON抵抗、OFF抵抗となって特性化している、と言うわけなのですね。因みに、上記資料では、「いずれも最大18V」となってますが、これは4000シリーズに関してのみで、74HC4xxxに関しては、最大6Vまでですのでお間違えなきよう^o^。
4052などの名称ですが、メーカーによって前後に文字列が付きます。東芝ならばTC4052BP、テキサスインストュルメンツ社製ならば、CD4052Bなどのように。でもほぼ同一の媒体ですので、特に指定されてなければどのメーカーの物でも差し替えて使う事が出来ます。ただ、74HC4052と、TC4052BPの場合は、TC4052BPが使われていた場所に74HC4052を置換する事はNG。供給されている電圧が6V以下ならば、どのタイプでも使用可能ですが、4000シリーズは18Vでの使用時に最速となりますので、それを5Vで使用した場合、高速なスイッチングが出来なくなります。しかも、4000シリーズで18V使用時の速度と、74HCの速度は歴然に違います。74HCシリーズのほうが4000シリーズより5倍~10倍程度の高速広帯域動作が可能で、その高速広帯域動作に頼っている回路の場合は、性能の劣る4000シリーズに置換する事で、回路が動作しなくなる場合もありますので注意が必要です。というか、ほぼ動作しなくなります^^。
じゃあ、CMOS 4000シリーズなんて不要じゃね?
まあそう言いなさんな。実は、4069(74HCU04)などのインバーターデバイスに関して、アナログ的な使い方をする場合、74HCシリーズでは6Vまでの出力が取りだせるのに対し、4069では18Vまでの出力が取りだせるわけで、PLLのチャージポンプ回路などが4000シリーズでそのまま組めたりする利点もあります。チャージポンプならば高速広帯域である必要はありませんのでね。
さて、ここまで半導体スイッチとしてCMOSタイプを紹介しましたが、1996年以降に登場した、接点リレーに変わる物として、最新デバイス
左=SSR(Solid State Relay)
右=PhotoMOSRelay
という物があります。SSRは本当に接点リレーの代替品となる物です(省電力~大電力を扱える)。PhotoMOSRelayは、フォトカプラの進化版(省電力を扱う回路に向く)。半導体としての低価格製造コストという事もあり、今後、接点リレーよりも安価になる事でしょう。また、接点リレーだと、5Vや12Vと言った電圧が必要なので、マイコンからの制御信号をトランジスターのスイッチング特性を利用した駆動回路が必要になりますが、SSRなどの媒体だと、マイコンからの制御信号だけで駆動可能(上記写真のは12Vの電圧を加えないとダメ)。
以上のように、耐久性のみを考えると、半導体媒体ってのは最良の選択肢になります。物理機構を持つHDDもそうですね。ただ、様々な事情により、今後HDDは暫くは存命し続けるとは思いますが。しかもSSD(Solid State Drive)に関しては、不揮発メモリーというちょっと特殊な半導体技術を用いている事から、今までの半導体よりも耐久年数は短く、通電時間に換算して数年でその特性が劣化します。お前はアナログか!ヽ(`Д´)ノ、って感じでね^-^。
そして、私が作り、人に贈呈する物の中で唯一、耐久性を犠牲にしても趣きを出したいって部分が一つだけありまして、それは、アナログメーター。これは、代替品としてそれと同等の目的を果たそうとすれば、バーグラフLED、LCDなどを使えばOKですが、それらにおいては絶対に出せない趣きや風情があります。そうは言っても、アナログメーターの耐久年数は、安価な物でも50年程度は持ちます。精密な値を読むテスターなどに用いたりする場合にはそれよりも短くはなりますけど。
って事で、今回は耐久性、耐久年数について、スイッチなどの媒体を用いて記事にしてみました。