SOT表面実装パッケージの小さい電源安定化ICでは有名ですが、前者は5V出力、後者は3.3V出力。今回例に挙げるのはひとまずはこの2つです。
まずデーターシートを見てみますと、最大入力可能電圧が15Vまでである事が
しかし
これは普通に考えれば誰でも気付くのですが、またもしかしすると当たり前過ぎて記述しているサイトが無いだけなのか、それともこういう使い方をする人がそもそも居ないのか分かりませんが、記載しているサイトが有りませんでしたので今回話題にします。
【入力可能電圧の最大値は15Vとは限らない】
答えを言いますが、シフトアップ回路の場合です。
電源ICには、入力、出力の他に、フィードバック端子やADJ端子、COM(GND)端子などがありますが、皆さんよく見かける物としましては
この系統ではないでしょうか。基本的には3つの端子が備わっている事で、日本国では「三端子レギュレーター」と呼ばれています(こちらの国ではそういった名称は存在しません。日本国独自です)。この3つの端子は概ね、入力、出力、COMという割り当てになっておりますが、これらレギュレーターはCOM端子を工夫する事で、基本特性を変更する事が可能です。
例として、
と言った感じになるのです。負電圧版ICも同様の考え方で可能であります。シフトアップと呼ばれる所以をお解かり頂けたと思いますが、ここで、78XXシリーズは概ね
つまり
7805を3.3Vシフトアップさせて8.3Vを取り出す回路の場合、上記表の for Vo=5V to 18V欄にある35Vが最大なのではなく、35V+3.3Vの38.3Vが絶対最大定格電圧の回路、って事になります。
もっと言うと、シフトアップを10V程度にすれば、45Vまで入力可能って事になります。
実はこれでも絶対最大定格は守られているのです。それはCOM端子はシフトアップさせた電圧分だけ上がっているわけで、つまりGNDレベルがシフトアップされた分だけ上がっている事になるわけです。
この概念を使い、ロードロップ特性(入力と出力電圧の差を低く出来る)が売りだが、最大入力電圧が15VまでというAMS1117シリーズで、12Vの安定化電圧を得たい場合などにも当てはめる事が出来るわけです。
では実際に使える回路を作ってみましょう。
上段は実際に動作確認した回路で、下段のほうはバッファ付き回路。とは言っても敢えてオペアンプのバッファを入れてCOM端子の電圧をシフトアップさせる必要性があるのか、って点ではかなり疑問でありますわね。バッファをこのように使っても電源品質に変化は無い気がします。100Ωを入れているのは、ツェナーダイオードが6.8Vですので、5Vレギュレーターから12Vを得るには、7Vのシフトアップが必要ですので、細かく12Vに拘りたい場合のシフトアップ&プチシフトアップって考え方であります。
尚、シフトアップしたとしましても、ロードロップな入出力特性は変わりません。12V出力を得たい場合、13V以上入れさえすればそれでOK(12V出力ICの7812の場合は標準としては3Vのドロップですので入力15Vは必用)。
AMS1117-5.0を22Vまでの入力で12V安定出力を得るちょっとした電源回路、DC-DC Converterを今回、記事にしてみました。
【ADJタイプ】
元々、可変タイプのレギュレーターの場合でも同様で、可変電源ICのCOM端子には既に回路が作られていると思います。GNDに向かって形成されているそのGNDをシフトアップすれば、シフトアップした電圧が可変の最低電圧になってしまいますが、一応はシフトアップが可能であります。