5/26/2015

AMトランスミッター KIKORI YR-1回路


PLL回路は、入手性の良いパーツを突き詰めていくと、CMOSのCD4046を中心としたこの類になります。しかし、実は、多少は希少なパーツを使うのも良いと思うようになってます。AM変調回路は、実は私のオリジナルではなく、チャールズウェンゼル氏がギルバートセルと呼ばれる差動増幅器を基本に構成された物を私が改良した物です。向かい合ったトランジスターと、その共通エミッターから更に振幅を変化させるトランジスターの3つで構成されてます。実はこの変調回路は、動作としてはスイッチングになるのです。向かい合ったトランジスターは、片方がONになると、もう片方がOFFになると言う動作をします(完全なるスパっスパっていうスイッチングでは無いですけど)。動作の詳細は長くなりますので別の機会に保留としますが、単純なコレクターに加わる電圧を変化させるコレクター変調(トランスを使用する形式も含める)では、深い変調を掛けるのは難しいのです。と言っても、トランジスターの動作点を、リニアリティー特性の中に納まるようにすれば良いのでしょうが、HAM(アマチュアの無線通信)などの声を乗せる程度では問題にならないのですが、音楽を乗せる場合には特に、低音領域で不快な歪を発生させてしまうのです。「バイアス設計がダメなだけだろ」とか言ったらとりあえず蹴っ飛ばします( ̄皿 ̄)。

話戻しまして、145163。基準クロック発振+Rカウンターにより、まずは10KHz(又は9KHz)を作り出す事から入ります。この10KHzが、位相比較の基準クロックとなります。位相比較器は常に、10KHzとなるように、VCOの電圧を制御し続ける事で、安定した発振器出力を得るわけです。Nカウンターにより、VCOから出力される信号を分周し、位相を比較し、10KHzとなるように動作するわけですが、これら各部の動作は、幾つかの個別に持つICにより行ってますが、VCO以外をワンチップにする事が可能なのです。しかしながら、パラレルI/Oによる分周比設定という仕組みは、現在では既にI2CなどのシリアルI/Oに取って代わっており、PICなどで制御する形なのが一般的になってますね。とは言っても、それ以前にPLL自体が衰退の一途を辿っており、DDS(Direct Digital Synthesizer)形式が主流でしょうね。

だがしかし!

ローテクな私は、ビンテージパーツだろうがなんだろうが、ディスクリートとまでは行かないにしても、各種モノリシックICを使うのが好きだったりします。

今では、仮に入手出来たとしましてもかなりの高値が付いているPLL ICとして、90年代には主流だったMC1451シリーズ。中でもMC145163は、自作どころか、汎用PLL ICとまで言われたくらいです。但し、実はこのMC145163は、主に日本での主流を見せていたのです。なので、こちらでは余り流通せず、こちらではMC1451シリーズでは、主にシリアルI/OのICが主流だったのです。しかし、今でこそPICなどのマイコンが浸透してますでしょうが、敢えてローテクなパラレルも良いもんです。


まあ本音を言うと、実はこのMC145163は、大量に所持しているので、使ってあげないと勿体無いかなー、って事情もあったりしましてね^-^。しかし、現在ではほぼ見かけなくなっているこの大きいDIP28PINパッケージ。と言っても、先述の個別にPLLを構成するよりも、コンパクトに出来るのです(回路的に)。と言うのも、この145163には、基準クロック発振回路、Nカウンター、Rカウンター、位相比較器などが全て入っており、ぶっちゃけ、この145163と4046のみで、搬送波を作り出すまで出来てしまうわけです。チップの数で言うと、3チップから2チップに削減できるのですが、ただ145163は足の数が28PINって事で、その数だけを見れば、個別3チップと大差ないかな、ってところですけどね。ただ、各IC同士の配線数としては削減できてスマートになるので、魅力的かと思います。

問題はですよ、この145163は、絶対最大電圧10Vで、標準5Vでの使用。5V時には標準30MHzまで扱うことが可能で、9V使用だと50MHz程度まで扱えるという、ちょっと珍しい電圧範囲なICです。

Datasheet

とにかく10KHzをまずは作り出す事からですが、これは145163に10.24MHzの水晶を使い、Nカウンターを

RA0=H(Pull Up to VCC)
RA1=NC

にする事で、1024分周となり、比較器準クロックを10KHzに出来ます。9KHzステップならば、水晶を9.216MHzを用いればOK。4.608MHz水晶が手に入るならば、RA0とRA1のNカウンターの設定を512分周設定、つまり両方の端子をLに(MC145163は内部にGNDへのプルダウンを持ってるので、LはNCでOK)にすればOK。

5Vで使用可能な事から、74HCシリーズとの相性も抜群ですね。

[簡略化と汎用化]

簡略化と言うと、とにかく部品点数を少なくするわけですが、汎用化のほうも重要です。自分だけが作ると言うのであれば、所持している大量のビンテージパーツを惜しみなく使うのですが、設計図などを公開して「みんなも作っちゃおうぜぃ」って向きですと、入手しづらい部品のオンパレードでは無意味ですのでね。

・コンプユニット

現在の2011コンプは、入手性がよいSA2011を使用する事で、恐らくは世界でも最小構成で音声圧縮を行う事が可能ですが、2011が入手性が良いのは、中国と日本。かく言う私も中国からの大量輸入により在庫としました。これを、OP AMP+ちょっとした外付け部品で再現出来ないかどうか、といった課題です。

・アナログメーター回路

現在は、入手難である7332、又は7318を使用しているのです。アナログデバイセス社の対数アンプICと言うのも選択肢なのでしょうが、実はこれもOP AMPにトランジスターを帰還内に入れる事で、理論上は可能なのです。しかし、実際にやってみると、トランジスターの特性バラツキにより、かなりの特性差異が認められた経験があります。